はんこの歴史と材質

日本国内のはんこの歴史というと、誰もが歴史で習った覚えのある「漢委奴国王」の金印を思い浮かべるのではないでしょうか。1784年に現在の福岡県の志賀島で発見されたもので、後漢の光武帝から授けられたという記録が残されています。奈良時代には、律令に定められた公印が使用されていましたが、原則として私印の製造や使用は禁止されていました。平安時代に入ると、貴族には私印使用が認められ、藤原氏がつくったとされる私印が多く現存しています。庶民は、離婚届などで必要となる際には、氏名の自署か人差し指による拇印が一般的でした。時代とともに一般庶民の生活に徐々に浸透していったはんこは、明治6年の太政官布告により、署名のほかに実印を捺印する制度が定められたことによって、急速に普及することとなり、布告日の10月1日は、はんこが市民権を得た日として印章の日となっています。

はんこには、昔からさまざまな素材を材料としてつくられてきましたが、現在でも最高級品としてよく知られているものに本象牙を印材として使ったものがあります。見た目の美しさや耐久性に優れているだけでなく、朱肉をよく吸着していつも変わることなく鮮明な陰影を得ることができるものです。高級感あふれる手触りや重量感など、象牙に勝る印材はないと言われています。象牙についで高級品とされているのが、水牛の角を印材として使用したものです。特に東南アジアに生息する黒水牛の角を使ったものは、代表的な印材として重厚感や風格を漂わせる逸品となっています。高級印材を使用した熟練職人の手彫りの印鑑は、まさに一生ものと言えるでしょう。